建設業許可は、建設業を営む上で重要な許可のひとつです。経営に役立つメリットが多数得られるため、多くの建設業者が取得していますが、申請すれば簡単に得られるものではありません。本記事では、建設業許可がもたらすメリットと、取得に必要な知識を解説します。
建設業許可とは
建設業許可とは、建設業を営む事業者が取得しておかなくてはならない許可です。建設業を営むうえで、取得しておくべき資格のひとつといえます。
建築業許可には複数の種類があります。営業所の数や位置・取り扱う工事の内容により必要な許可は異なるため、自社の状況や業務に合わせて取得しなくてはなりません。また、許可には期限があるため、更新手続きなども必要です。
建設業許可の種類
建設業許可は、営業所や行う工事により取得すべき許可が異なります。まずはどの許可を取得すべきか把握しておきましょう。建設業許可の種類について解説します。
営業所の置き方による違い
建設業許可には、ふたつの種類があります。
- 国土交通大臣許可
- 都道府県知事許可
どちらを取得するべきかを判断するには、営業所の置き方に注目しましょう。ひとつの都道府県内に営業所を置く場合は、都道府県知事許可を取得します。複数の営業所を持つ場合でも、都道府県をまたがないなら、同様です。
複数の都道府県に営業所を持つ場合は、国土交通大臣許可を取得します。これは、営業所を新しく別の都道府県に設立するときも同様です。このような場合、今まで取得していた許可を国土交通大臣許可に切り替えなくてはなりません。
元請・下請の有無による違い
建設業許可は、元請・下請によっても分類できます。分類の条件をまとめたのが、以下の図です。
分類 | 条件 |
一般建設業許可 | 元請ではないすべて自社施工で行う元請元請だが下請に4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)の工事を出さない |
特定建設業許可 | 4,500万円以上の工事を下請に出す |
特定建設業許可の条件は、請負一社当たりではなく、工事ごとに出した下請合計金額で計算します。取得する許可を選ぶ際は、計算に注意しましょう。
建設業許可の有効期限
建設業許可には有効期限があります。許可を維持するには定期的に更新しなくてはなりません。許可の有効期限は5年間です。更新は有効期限が切れる前に行う必要があります。
更新は許可期間満了の30日前までに申請しなくてはなりません。期間の最終日が土日祝日でも延長などはないため、ご注意ください。また、許可を得るためには許可条件を満たす必要がありますが、これは更新のときも同様です。
建設業許可を取得した後は、許可期間や更新可能時期をいつでも確認できるようにしておきましょう。更新の際は、条件を満たしているかも再確認しておくと安心です。
建設業許可を取るメリット
建設業許可には、事業を有利に進めるのに役立つメリットが多数あります。取得で得られるメリットもあわせて覚えておきましょう。建築業許可が持つメリットを解説します。
融資を受けやすくなる
建築業許可を取得していると、金融機関からの融資を受けやすくなります。金融機関から一定の信用を得られるのは、大きなメリットといえるでしょう。
通常、金融機関から融資を受けるには、事業がきちんと運用でき、返済の見通しが立っていることを証明しなくてはなりません。建築業の場合は、国家資格の有無や資金などの問題をクリアしていることを証明する必要があります。
建築業許可があれば、国が定めた条件を満たしたうえで事業を行っていることを証明できます。融資の審査を有利に進めたい場合に役立つでしょう。
公共工事に入札できる
公共工事を受注するには、建設業許可が必要です。安定した受注や実績を得たいなら、建設業許可は欠かせない資格のひとつであるといえます。
公共工事は、景気に左右されず毎年一定量の仕事が受注されるうえに、工事代金を確実に回収できます。建設業を安定して運営するには、積極的に受注したい工事です。また、実績としてもアピールしやすいため、事業の信用性を確保したい場合にも役立ちます。
このことから建設業許可は、安定した事業の運営や、実績確保にも有効な資格であるといえます。
500万円以上の工事ができるようになる
建設業許可を取得すれば、500万円以上の工事を請け負えます。大規模案件の依頼を受けられるようになるのも、建設業許可を取得すると得られるメリットです。
建設業許可を得ていなくても建設業としての仕事はできますが、制限がかかります。せっかく大きな案件をもらえることになっても、許可がなければ受注できません。建設業許可は、ビジネスチャンスをつかむのにも欠かせない要素であるといえます。
建設業許可の取得条件
建築業許可を取得するには、複数の条件を満たす必要があります。この条件は、取得時だけでなく更新時にもチェックが必要です。建設業許可の取得条件をおさえておきましょう。
建築業務管理責任者の配置
建設業許可を取得するには、経営業務の管理責任者を常勤で配置しなくてはなりません。管理責任者に任命できるのは、以下の経験を一定の年数まで積んだ人員のみです。
経験の内容 | 年数 |
建設業の管理責任者 | 5年以上 |
建設業に関し管理責任者に準じる立場で経営業務の管理を行った経験 | |
建設業に関し管理責任者に準じる立場で管理責任者を補佐する業務を行った経験 | 6年以上 |
また、以下の条件を満たした補助者を配置することでもクリアできます。
- 建設業の財務管理、労務管理または業務運営のいずれかの業務に関し役員などの経験を2年以上含む5年以上の建設業の役員または役員などに次ぐ職制上の地位における経験を有するもの
- 建設業の財務管理、労務管理または業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員などの経験を2年以上含む5年以上の役員の経験を有する者
- 許可申請を行う建設業者などにおいて5年以上の財産管理の経験を有する者
- 許可申請を行う建設業者などにおいて5年以上の労務管理の経験を有する者
- 許可申請を行う建設業者などにおいて5年以上の運営業務の経験を有する者
なお、上記の条件における役員とは、以下の役職を指します。
- 株式会社または有限会社の取締役
- 指名委員会などを設置する会社の執行役
- 持分会社の業務を遂行する社員
- 法人格のある各種組合などの理事
管理責任者が退職した場合は、新たな責任者を選任しなくてはなりません。不在期間を作らないためにも、新任候補をある程度決めておくといいでしょう。
専任技術者の配置
建設工事の請負に当たり、請負契約の締結や見積もり・入札への適切な対応には建設業の専門的な知識が必要です。建設業許可では、これらの業務にあたるための専任技術者の配置も条件に含んでいます。
専任技術者は許可区分や建設業の業務により異なるため、許可申請を出す前に確認しておきましょう。以下の図は区分ごとの専任技術者になれる条件をまとめたものです。
許可区分 | 専任技術者の条件 | 実務経験年数 |
一般建設業 | 在学中に指定学科を修了し、指定の実務経験を積む | 高卒:5年以上専門卒:5年以上大卒:3年以上専門士・高度専門士:3年以上 |
許可を得ようとしている建設業で実務経験を積む | 10年以上 | |
許可を取る建設業に必要な国家資格を取得する | なし | |
特定建設業 | 一般建設業の条件を満たし、発注者から4,500万円以上の代金で請け負った工事で、工事主任や主任技術者などの指導監督的経験を積む | 2年以上 |
なお、以下7業種の指定建設業で許可を取得する場合は、国家資格または大臣特別認定者の条件を満たす必要があります。
- 土木工事業
- 建設工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
特定建設業で許可申請する場合は、資格の有無も深く関係するため、ご注意ください。
安定した財産の保有
安定した工事を提供するために、建設業許可は財産要件も条件に含まれています。こちらも許可区分により条件が異なるため、取得の際は混同しないようにしましょう。
許可区分 | 財産要件 |
一般建設業 | 自己資本額500万円以上500万円以上の資金調達能力を証明できる許可申請直前の5年間許可を受けて営業していた(更新・業種追加申請の場合) |
特定建設業 | 欠損額が資本金の20%を超えていない流動比率が75%以上資本金額2,000万円以上自己資本額4,000万円以上 |
欠格事由に当てはまらない
建設業許可には欠格事由も定められています。建設業法に規定されており、以下のような場合に該当する場合は、ほかの条件を満たしていても許可は得られません。
- 自己破産して復権していない
- 犯罪歴がある
- 虚偽の内容で申請した
- 重要事項を無記入で申請した
欠格事由のうち犯罪歴は役員だけでなく従業員も調査されます。刑罰が消滅しても、5年以上経過していない場合も欠格事由として認められるため、雇用時に確認しましょう。
まとめ
建設業許可は、建設業を安定して運営するために欠かせない許可のひとつです。取得の際は、自社に必要なものや、その条件をよく確認したうえで取得しましょう。また、許可の有効期限や更新時期にもご注意ください。